【宗教】 「福千年」は来なかった。 (4)

 前回、書かせて頂いた「【宗教】 「福千年」は来なかった。(3)」の続きです。  論旨のベースになるのは同じく下記の著書です。

===================================================================================
 本:「ゾロアスター教―三五〇〇年の歴史
    メアリー・ボイス(著) 山本由美子(訳) 筑魔書房 1983年
===================================================================================

では、この著書をベースにしてゾロアスター教の布教と救世主信仰の確立を見てみたいと思います。

同書 第三章 マズダー礼拝の確立 より主要部を抜粋して引用する。
-----(引用開始)-------------------------------------------------------------------
はじめに
 ゾロアスターの教えは高尚で、昔からのアフラ信仰を発展させたものでありながら、人々を怒らせたり惑わせたりするものを多く含んでいた。 ゾロアスターに従って正義を求める者はすべて天国に行くという希望を与えたために、すべての下層民は死後地下に行くものと定めて貴族や祭司たちの伝統を絶ちきったとみられるからである。 -----

-----(引用終り)--------------------------------------------------------------------

 この本によれば、ゾロアスターによる初期の伝道は、困難を極めたようですが、他部族の王を帰依させることに成功したようです。 その後、インド・イラン語族は紀元前1500年頃、ステップしたいから南下し、中央アジア越えてインドまたはイラン高原に進出していたとのことです。
 ではいよいよ救世主信仰についてです。


同書 第四章 記録のない数世紀 より主要部を抜粋して引用する。
-----(引用開始)-------------------------------------------------------------------
救世主信仰
 この信仰の暗黒時代に、神学上重要な発展があった。 それは「サオシュヤント(saosyant)」つまり来るべき救世主についての信仰が育ったことにある。 「ガーサー」の詩句によれば、ゾロアスターは、世界の終末が切迫していて、アフラ・マズダーは最後の戦いで欠くべからざる役割を果たすため人類を駆り立てるようにと、彼に真理を啓示して委ねたのだと認識していた。 しかし自身は生きてフラショー・クルティを見ることはないと認識していたに違いない。 そこで、彼に続いて「善い家系の信心深い人」つまりサオシュヤントが来るということが、彼の教えにあったようである。 サオシュヤントの文字通りの意味は「恩恵をもたらす人」で、彼こそが、悪に対する最後の戦いにおいて人類を率いる人である。 ゾロアスターの信奉者たちは、これを待望し、サオシュヤントは、湖(カンサオヤ湖と同一視される)の底に奇跡的に保存されている預言者自身の子種から生まれると信じるようになった。 それによると、時の終り近づく時、この湖で一人の処女が水浴して預言者の子を孕み、時満ちて生まれる息子は「アストワト・ウルタ=正義を体現する者」と名づけられる。 この名はゾロアスター自身の「正義が体現されますよう」という言葉に基づいている。
 奇跡によって受胎するとはいえ、来るべき救世主は、このように人間の両親から生まれるとされている。 したがって、このサオシュヤント信仰が発達したことは、人間が宇宙の大闘争において大きな役割を演ずることになるというゾロアスター自身の教えを裏切るものではない。 サオシュヤントは、王や英雄のようにフワルナを伴なう者と考えられる。

  -----

 信者たちは、この栄光に満ちた時を待ち望み、逆境の時にも、この希望を力とし慰めとするべきとされた。
 救世主がこるという信仰の中に奇跡という要素を発達させたのとちょうど同じようい、預言者の人となりも、数世紀を経ると自然に誇張されるようになった。

-----(引用終り)--------------------------------------------------------------------

 これが救世主信仰です。 処女が奇跡によって受胎する。 ---- キリスト教の聖母マリアの処女受胎と似ていませんか?

 その後、ペルシャ帝国と国教としてゾロアスター教は最盛期を迎えますが、サーサーン朝の後期にアラブの進入を受けるようになります。 モスリム支配の中で、ゾロアスター教徒はモスリムへの改宗をさまられ受難の時を過ごすことになります。

 では、救世主は何時来るのか? 同書より下記に引用します。

同書 第五章 アケメネス朝時代 より一部を抜粋して引用する。 (P-108)
-----(引用開始)-------------------------------------------------------------------
 ゾロアスター教の世界年を形成するのは何千年紀かという点については、諸テキストに異同があり、(三の三倍というのが好まれた数であるので)九だとするものがある一方、(自然年の月数に対応して)十二というものもある。 しかしながら、本来の数は六千年であったのではないかと考える理由があり、その数を祭司階級の学者がこの歴史観を展開させた時にふやしたのであろう。 この六千年のうしはじめ三千年は、創造と混合の課程と初期の人類史に帰せられた。 ゾロアスター自身は三千年紀の末に生まれ、啓示を受けたのは三千年目の年とされた。 善の時と創造の最終的な目標への課程の時がそれに続くが、その後、人々は彼の教えを忘れ始める。 四千年に、「ウフシャヤト・ウルタ=正義を成長させる者」という名の第一の救い主が預言者の福音を再び説くことであろう。 歴史はまたくり返され、彼の弟で「ウフシャヤト・マヌ=崇敬を成長させる者」が五千年目の年に現われる。 そのあと最後の千年に、最大のサオシュヤントである。アストゥワト・ウルタそのものが現われ、フラショー・クルティをもたらす。
 このような三人の救い主についての教義は、さらに祭司階級の学者によって、人類が黄金時代たるイマの時代から、(最初のサオシュヤントの来る前の堕落の時とされている)哀れな現在へ凋落したという古いイランの伝統と、ゾロアスターの希望の告示とが混ざり合わされ、出来事が回帰するというパターンをこみいったものにする余地を与えたのであった。 しかし世界の年代学と三人のサオシュヤントについての全体像は、学者のためだけのものであったらしく、一般の人々はゾロアスターの預言したただ一人の救世主が現われるのを待ち望み続けるだけだった。
-----(引用終り)--------------------------------------------------------------------

同書 第十二章 サファビー朝とムガル朝時代 より一部を抜粋して引用する。 (P-257)
-----(引用開始)-------------------------------------------------------------------
 ----- 彼らは「世界年」の十番目の千年紀がヤズデギルド三世の治世と共に始まったと信じ、その千年後つまり1630年には、サオシュヤントが到来して栄光ある終末の日が来ると期待していた。 ----- その待ち望まれた年が何事もなく過ぎ去ったことは、彼らにとって残酷な一撃であった。

-----(引用終り)--------------------------------------------------------------------

 結局、期待された救世主の到来の日、それに続く「福千年」の時は来なかったのです。
 僕が、何を伝えたかったのかというと、キリスト教(ユダヤ教)の教義がオリジナルな特殊なものではなくもっと古い宗教であるゾロアスター教の教義、もっといえば、当時一般的な考え方を採り入れたものだったのではないのかと言うことです。


★人気ブログランキング★に参加しています。
画像 ← 参考になりましたらクリックをお願いいたします。




ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック